ディモルフォセカ――「2つの形状の果実」


(1)形の違うタネから同じような花が咲いた

ミックスシード愛好会」というサイトの管理人をしているのですが、2015年の春、サイトの読者様から興味深いご投稿をいただきました。

「まるで別な植物としか思えないほど形が違う2種類のタネから、同じような花が咲いた。とはいえ株の形や花の様子が少し異なるので、どちらかがディモルフォセカ(Dimorphotheca)で どちらかはオステオスペルマム(Osteospermum)だろうか?」

というものです。 2種類の画像を拝見したところ、確かにタネの形が違います。一方は鉤爪状で、もう一方は雫状。
ディモルフォセカのタネ A鉤爪状ディモルフォセカのタネ B雫状

区別のため、鉤爪状のタネをA、雫状のタネをBと呼ぶことにします。
株や花の様子も少し異なるのですが、2種類ともディモルフォセカのようでした。




(2)ディモルフォセカ と オステオスペルマム

ディモルフォセカとオステオスペルマムはアフリカ原産のキク科植物で、どちらもAfrican Daisyと呼ばれます。

ディモルフォセカオステオスペルマム
【画像左】ディモルフォセカは一年草、黄色〜オレンジ色系の花
【画像右】オステオスペルマムは多年草、白-ピンク-紫色系の花で葉に光沢がある

というように一応区別できます。けれども数年前までは両方ともディモルフォセカの名で流通していましたし、現在は交配種もいくつもあるので区別が困難だとも言われています。



(3)ディモルフォセカのタネを購入して確認

ディモルフォセカ…Dimorphothecaという学名は「Dis(2つ)」「Morphe(形状)」「Theka(果実)」というギリシャ語から成り立ち「2つの形状の果実」という意味だとか。そして、その名が示すように舌状花の果実と管状花の果実では形が違うのだそうです。(Wikipedia - Dimorphothecaの項目より)

実際にタネ(※厳密に言うと痩果という果実なので、ここから先は果実と表記します。)を購入してみると、銘柄によって形が違っていました。


↓2016年に単品で購入したスプリングフラッシュ オレンジという品種の果実
ディモルフォセカのタネ
ディモルフォセカのタネ C円盤状
径6〜7mmぐらいの いびつな円盤状の果実。
区別のためにCと呼ぶことにします。


↓2017年に購入したワイルドフラワー ハイドロカラーミックスという
ミックスシードに入っていた果実(品種は不明)
ディモルフォセカのタネ
A鉤爪状
長さ6〜7mmぐらい、表面にギザギザのある鉤爪状の果実。
前出のAと同タイプです。



ここで新たな疑問が2つ。
疑問1. どれが舌状花の果実でどれが管状花の果実?
疑問2. 果実の形状が2種類ではなく、A・B・Cの3種類?



(4)花を分解して確認

疑問1の「どれが舌状花の果実でどれが管状花の果実?」
花を分解して見てみましょう。

ディモルフォセカの花
舌状花・管状花それぞれの根元についている子房の形が違っているのがわかります。

ディモルフォセカの花を分解ディモルフォセカの花を分解
【画像左】舌状花の子房はギザギザのある鉤爪状  
【画像右】管状花の子房はいびつな円盤状
です。この子房が発達して果実になるので、疑問1が解けました。



(5)実ったタネで確認

2016年に種まきしたスプリングフラッシュ オレンジは結実しないまま枯れてしまい確認できませんでしたが、 2017年に種まきしたワイルドフラワー ハイドロカラーミックスに入っていたほうはうまく結実してくれました。

ディモルフォセカの果実ディモルフォセカのタネ
一つの花(厳密には頭状花序)にC・円盤状の果実がぎっしり実っています。よく見ると外周側には少数のA・鉤爪状の果実が実っています。

ディモルフォセカのタネディモルフォセカのタネ
果実の中に入っている種子はどんな形でしょう? 取り出してみます。

ディモルフォセカのタネ
A・鉤爪状の果実も、C・円盤状の果実も、中に入っていたのはB・雫状の種子でした。
これで疑問2も解けました。

まとめ
2つの形のディモルフォセカの果実


とすると、冒頭のミックスシード愛好会にご投稿いただいた件は……

 Aが舌状花の果実
 Bは舌状花か管状花どちらかの種子

ということのようです。
育ってからの株や花の様子が少し異なるように見えたのは個体差なのでしょうか。
これは次シーズンに追跡調査してみることにします。



(6)【オマケ】オステオスペルマムの果実

オステオスペルマム…Osteospermumの学名は「osteon(骨)」「sperma(種子)」というギリシャ語から成り立ち「骨のように硬い種子」という意味だそうです。(Wikipedia - Osteospermumの項目より)

↓2016年に購入したパッションという品種の果実。
オステオスペルマムのタネオステオスペルマムのタネ
ヒマワリの果実に似た形で、黒っぽい果実です。

オステオスペルマム
舌状花の子房は角ばった雫状、管状花の子房は先の尖った短冊のような平たい形状です。

オステオスペルマム
若い果実の画像。舌状花の果実は大きく膨らんで立体的ですが、管状花の果実は短冊状のまま少し長くなっただけです。
熟するのは舌状花の果実だけなのでしょうか。これも次シーズンまで追跡調査してみます。


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