乾物や焼き海苔の包装の中に入っている石灰乾燥剤(生石灰)。これ、園芸用の石灰肥料として利用できるようです。(注1)
肥料と言っても、栄養分というよりは土壌の酸性を中和するのが主な効果ですけど。
植物の根や種子に直接触れると傷めてしまうことがあるので、植え付け(種まき)の2週間前に適量を土に混ぜ込んで馴染ませます。
(注1)肥料として利用できるのは、袋に「石灰乾燥剤」と書いてあるものだけです。エージレスなどの脱酸素剤(主成分は鉄)やシリカゲル(主成分は二酸化ケイ素(SiO2))は、肥料としての効果は不明です。
※生石灰は強いアルカリ性物質なので、皮膚や服についたり目や口に入ったりしないよう充分にご注意くださいね。
※生石灰は水と反応して発熱します。条件によっては火災が起きるほど高温になりますので、水がかからない場所で保管してください。
ところで、石灰乾燥剤(生石灰)を肥料として使うにあたり、いくつかの疑問点がありました。
疑問1 | 土の酸性を中和するのに適正な量はどのぐらい? ちなみに、園芸用に市販されている消石灰や苦土石灰の使用目安量は、1平方メートルあたり100〜200g程度とされています。 |
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疑問2 | そもそも、うちの土の酸性度はどのぐらい? 中和する必要はあるの? |
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疑問3 | 作物によって適正pHが違うんですって? | |
疑問4 | 生石灰は水と反応して発熱します。 実際にはどんな条件で何℃ぐらい上昇するの? 火事になる心配はない? |
疑問に思いつつも、2008年春までは適当に混ぜて使っていました。
50cmのプランターにつき1袋(40グラム)ぐらいを。
幸い、その割合で混ぜて、発熱で高温になった様子はなく、植物に障害が出ることもありませんでした。
でもやっぱり気になる! そんなわけで、前述の疑問点4点について調べてみることにしました。
疑問1 | と | 疑問2 | に関連する実験 |
まず我が家の土のpHを調べるには……?
園芸カタログや専門店で「土壌pH測定計」というものを売っていますが、4000円台〜と結構高価です。
もっとお安く測定する方法はないものかと検索していたら、pH試験紙を使った測定法を紹介しているサイトを見つけました。
→「高校農業農業実験」
この方法を参考に測定してみましょう。
※関連ブログ記事:土壌pHのほかにも身近な液体のpHを測定してみました。 →「身近なものの pH測定」(ブログ記事へのリンク) |
では、おおざっぱに測定開始〜。
土は我が家の土を含めて4種類用意してみました。
A | プランターで何年も使い回している“ウチの土” | |
B | “ウチの土”約7kg(50cmプランターに一杯分)に 石灰乾燥剤 約40g(一袋)を混ぜたもの |
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C | 市販されている腐葉土 | |
D | 市販されている種まき用の土(主原料:ピートモス、パーライトなど) |
20分後、上澄みにpH試験紙を浸けて、試験紙の色の変化を見ます。
あらら……土だらけ。ま、いっか〜。
試験紙に付属している色見本と照らし合わせます。
「B 石灰乾燥剤入りウチの土」だけが pH 9〜10でアルカリ性に傾いています。
石灰乾燥剤入れ過ぎですな。
「A ウチの土」「C 市販の腐葉土」「D 市販の種まき用土」はいずれもpH7〜6.5ぐらい?
中和する必要はなさそうです。
ということは、前述した園芸用石灰肥料の使用目安量と同じ程度「1平方メートルあたり100〜200g程度」を施しておくのがよさそうです。プランター1杯に換算すると10〜20gぐらいでしょうか。
結論:
プランター1杯の土(約7kg)に石灰乾燥剤 一袋(約40g)は多すぎ。10〜20g 程度が適量。
疑問3 | について |
ツツジの仲間やジャガイモは酸性に強いことがよく知られています。
それとは逆に、地中海沿岸原産の植物は酸性には弱いかもしれません。
いずれにせよ、土壌を中性に保っておけば何にでも使えるってことですね。(おおざっぱ)
【作物ごとの適正pH 参考サイト】
奈良県農業総合センター「作物の好適土壌pH」
http://www.pref.nara.jp/nogyos/nousou/sehi-kijyun/ph-ichiran.htm
四日市市農業センター「園芸ミニ講座 石灰質肥料の使い方」
http://www.city.yokkaichi.mie.jp/farm/virtual/minikouza/sekkai.html
新しい「農」のかたち
「土壌PHと作物(1) 日本の土壌はみな酸性」
http://blog.new-agriculture.net/blog/2008/04/000544.html
疑問4 | について |
生石灰は水と反応して発熱します。条件によっては火災が起きるほどの高温にも。
岐阜県まるごと学園の「生石灰で玉子焼き」実験によりますと、
生石灰 約100g + 水200ml で目玉焼きが作れるほどの温度になるとのことです。
園芸で使用する場合は、少量の石灰乾燥剤を大量の土に混ぜ込んでから灌水するわけですから、こんなに高温にはならないと思いますけど、何度ぐらい上昇するのかは知っておきたいものです。
というわけで、またまたおおざっぱに実験開始〜。
A | プランターで何年も使い回している“ウチの土” | |
B | “ウチの土”約7kg(50cmプランターに一杯分)に 石灰乾燥剤 約40g(一袋)を混ぜたもの (生石灰濃度(?)……約0.57%) |
2種類の土を3号ポリポットに入れます(それぞれ約90g)。
温度計を差し込んだら底から吸水させます。
A | プランターで何年も使い回している“ウチの土” | |
E | “ウチの土”約90gに 石灰乾燥剤 約10gを混ぜたもの (生石灰濃度(?)……約11%) |
9時50分スタート どちらの温度計も19℃ぐらいです。
10時00分 おぉぉ、変化が!
ウチの土が21℃、石灰乾燥剤増量土が25℃ぐらいです。
11時45分 どちらの温度計も22℃ぐらいになりました。
まとめ:
プランター1杯(約7kg)に石灰乾燥剤 一袋(約40g)ではほとんど温度変化なし。
その20倍の量を入れた場合に4℃ほど温度上昇しました。
結論:
適量で使用するぶんには火事になる心配はなさそうです。
念のために、石灰乾燥剤+水だけでも実験してみました。
海苔の袋から出したばかりの“生きのいい”(注2)石灰乾燥剤20g。 |
水道水100cc。 水温18℃ぐらいです。 |
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耐熱容器に入れてまぜまぜします。早くも温度上昇。 |
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反応が終わったようです。 |
この実験でも十数℃上昇しただけでした。火災や火傷の心配はなさそうですが、生石灰は強いアルカリ性物質なので、粉や水溶液が皮膚や服についたり目や口に入ったりしないよう充分にご注意くださいね。
(注2)“生きのいい”石灰乾燥剤:
石灰乾燥剤(生石灰)は、長いこと空気に触れていると湿気を吸収して消石灰に変化します。
←こんなふうに袋がふくらんだものは、もう消石灰になってしまっているで、水を注いでも発熱しません。
園芸に使うのにはむしろ好都合です。
以上、石灰乾燥剤に関する実験でした。
【参考サイト】石灰に関する基礎知識は…… |
【参考サイト】園芸用石灰肥料のことが詳しく載っているショップ
千草園芸(石灰資材ページ)
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